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患者サポート団体 宮﨑 拓郎 さん

インタビューした方の似顔絵イラスト

IBDを抱えている患者さんは、およそ30万人。
あなたと似た境遇で働いている
先輩患者さんが見つかるかもしれません

年代、症状、地域は違っても同じ病気を抱えた者同士だからこそわかること、支えになることがあります。
潰瘍性大腸炎・クローン病患者さんたちがつながり、交流ができる、IBD患者さんオンラインコミュニティ
「G Community」を運営する宮﨑拓郎さんに、お話を伺いました。

目次

「指定難病」の一つで日本におよそ30万人の患者さんがいる

潰瘍性大腸炎・クローン病などのIBD (炎症性腸疾患)は原因不明の腸の炎症を伴う疾患です。国の指定難病とされており日本にはおよそ30万人いると推計されています。発症直後は「なんで私が」「なぜ僕だけが」と思うことがあるかもしれませんが、困ったことや辛いことがある場合にも一人で抱え込まないでほしいと思います。

ちなみに、私が以前留学中に住んでいたアメリカではおよそ300万人のIBD患者さんがいると推計されています。IBDの認知度も高く、「僕は高血圧なんだけど」というような感覚で、ざっくばらんにIBDであることを語る方もいました。

IBDの症状は一人ひとり異なることが多く、置かれた状況、生活環境も異なることがあると思います。また就労についても同じで、「治療と仕事の両立」と一言で言っても、これから就職を迎える学生さんもいれば、仕事に夢中の20~30代の方、キャリアを重ねてきた管理職の方や独立して頑張っている方もいます。

患者サポート団体には様々な患者さんがいて、様々な働き方をされています。「G Community」を通じてこれまで多くの方の声や経験を見聞きしてきた中から、先輩患者の皆さんが治療と仕事をどう両立させてきたのかをご紹介します。

病気を開示するかしないか、どう伝えるか…

まず、職場や就職を希望する企業に、病気のことを開示すべきか、するべきでないか、という悩みを多く聞きます。多くの先輩患者さんたちが口を揃えて言うのは「誰にでもフィットする一つの正解はない。ケースバイケース」ということです。たしかに、この一言に尽きるのですが、伝える場合には学生さんと社会人ではポイントが少し異なるかもしれません。

学生さんの場合、就職活動の際に伝えることがネガティブ要素になってしまうことを考えて、病気を開示しない方が少なくありません。ただし、「病気を開示せずに入社した後に、悪化してしまったらどうしよう」という不安がストレスになることもあるようです。
もし、病気を面接などのタイミングで伝える場合には「病気を抱えているが、学生生活の中では工夫をすることでアルバイトも両立できていた、学校ではサークル活動に参加していた」など具体的な「治療と活動の両立例」を一緒に伝えることがおすすめです。会社側も、より具体的に、職場における必要な配慮やあなたの活躍をイメージしやすくなると思います。

社会人の場合、治療に専念するために長期休暇を取る場合などには、病気について伝える必要が出てきます。一方、転職する時には、症状が軽くコントロールできる状態にあれば、転職活動の際には伝えずに、悪化した時に伝えるという人もいます。
伝え方としては、病気そのものについて詳細に伝える患者さんは少ない印象です。「必要な配慮」を的確に伝えることが最も大切です。例えば「定期的な通院が必要なので、仕事の共有やフォロー体制を考えてほしい」「トイレに行く回数が多くなるので席を立つことが多いが気を遣わないでほしい」といった具体的なことです。IBDという病気を詳しく理解してもらうよりも、あなたが安心して働くためにどのような配慮が必要かを理解してもらうことが重要です。

自分なりの病気との付き合い方を徐々に見つける

就職しなければならない、働かなければならないと焦る気持ちもあるかもしれませんが、「まず病気をコントロールして体調を安定させる」、その次に「仕事を考える」という順番で考えると良いかもしれません。

IBDは、発症初期に最も不安が募るという患者さんが多いです。その理由の一つとして、どんな時にどう体調が急に悪化するか、経験値が少なくて自分でも体調の変化の傾向が掴めないことがあると思います。1〜3年経つと、多くの患者さんが病気との付き合い方がわかってきます。食生活の工夫、ストレスとの向き合い方などです。「体調が悪化しそうと思った時には、食事の内容を調整することや睡眠時間を増やすことで体調を調整する」という方もいます。病気と付き合っていく中で、それぞれの患者さんが自分なりの症状をコントロールするコツやノウハウをためていかれるようです。突発的な不調を防げるようになると、仕事に集中できるようになると思います。

10~20年前から比べてIBDの治療は発達したと思います。実際に治療の選択肢も増えています。昔だったら「この薬が合わなかったら次は手術しかない」というような局面でも、別の治療選択肢を選べることも増えている印象です。先輩患者さんたちの経験を参考に、自分なりのコントロール方法を見つけてみてください。

会社と相談しながら働きやすい環境を整える

病気と仕事の両立を目指す時に会社の規則やルールが障壁になるケースもあるかと思います。そんな時は一人で悩まずに、会社の上司や人事の方に相談してみることも一案です。様々な会社が、病気を抱える人も含めた多様な方が活躍できるよう、働きやすい環境を整えようと取り組んでいます。また、社内でなかなか相談できない場合は難病就労サポーターの方らに相談してみることもおすすめです。何かしらヒントが得られるかもしれません。

海外では、患者さん同士、医療従事者、研究者らがつながり、病気を抱えていても生きやすい社会を目指して様々な取り組みが行われています。日本においても、患者さん同士や患者さんと支援者のつながりなどは少しずつ強くなっていると思います。多彩な関係者と連携しながら、病気を抱えていても働きやすい、力を発揮できるような社会を一緒に作っていければと思います。

きっと、あなたと似た境遇の人がいる

「正解はない。ケースバイケース」だからこそ、患者仲間、職場、難病患者就職コーディネーターさん、病院内の就労相談窓口のスタッフさん、などまずは相談できる相手をぜひ見つけましょう。きっと大きな支えになると思います。

様々な患者さんがいます。その中から、発症時期が近い、年代が一緒、仕事のスタイルが似ているなど、自分と近い境遇の方を見つけられると思います。そうした患者さんの経験や声はあなたが課題を乗り越える上で、またはキャリアを模索する上で何かしらヒントになるかもしれません。まずは、ぜひ患者さん同士が情報交換している患者コミュニティを覗いてみてください。

IBD患者向けオンラインコミュニティ「G Community」

潰瘍性大腸炎·クローン病患者さん·ご家族·パートナーのためのオンラインコミュニティです。
医療の専門家や他の患者さんにオンライン上で無料で相談できます。

https://gcarecommunity.com

宮﨑 拓郎 さん

IBD患者向けオンラインコミュニティ「G Community」を主宰する株式会社グッテの代表取締役社長。
米国登録栄養士(RDN)、公衆衛生学修士(MPH)、中小企業診断士。
帝人ファーマ株式会社で事業開発等を経験後、退職し渡米。2018年ミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。同大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学消化器内科で臨床試験(低フォドマップ食/アプリ等)に従事。在学中に日本でグッテを起業し、帰国後、代表。講談社より書籍2冊を共著で出版。食事指導にも従事。