ホーム > 支援の輪インタビュー > 両立支援コーディネーター/キャリアコンサルタント

両立支援コーディネーター/キャリアコンサルタント
砂川 未夏 さん

インタビューした方の似顔絵イラスト

話をしながら一緒に
「自分の棚卸し」をしてみませんか?
あなたらしい生き方・働き方が見えてきます

「治療」と「仕事」を両立できるよう、病院と企業のつなぎ役としてサポートしてくれる「両立支援コーディネーター」をご存知ですか?今回は、両立支援コーディネーターであり、キャリアコンサルタントとして多くの方の仕事人生を共に考え、支えてきた、砂川未夏さんにお話を伺いました。砂川さんご自身も、病と向き合ってきたご経験をお持ちです。

うまく言葉にならなくても、ひと声あげてみてほしい

両立支援コーディネーターは、講習を受講すれば取得できる認定資格です。産業保険総合支援センターや企業の人事部など、案外、皆さんの身近なところにも資格取得者がいるかもしれません。キャリアコンサルタントは、病気を抱えているいないに関係なく、その人らしい働き方・生き方をサポートする専門家で、国家資格です。私はこの両方の視点を持ちながら、「職場復帰してみたけれど…」「転職しようかどうしようか迷っているんだけれど…」といった、皆さんが抱える不安や問題を一緒に考えていきます。

突然「キャリア」と言われると身構えてしまうかもしれませんが、「キャリア=バリバリ働くこと」ではありません。「あなたのキャリア=あなたの生き方・働き方」という意味だと思ってください。病を抱えていても抱えていなくても、誰もが一人の社会をつくる人であることに変わりはありません。

私のところに相談にきてくれる方は、専門情報を得たいわけではなく、気持ちの整理ができず悩み込んでしまっている方が多いです。「そもそも、こんなまとまらない気持ちを人に言っていいのだろうか?」と躊躇しながら話してくれる方も多いのですが、そのまま伝えてくれればいいんです。

就労に関する悩みは、数値に表れるものではないため、「困っているんです」「不安があるんです」と声をあげてくれて初めて、手助けができます。ご本人はもちろんのこと、ご家族や会社の方などからのご相談も大歓迎です。もっと気軽に頼ってもらえたら嬉しいです。

ぐるぐるしている気持ちの原因も苦しさも人それぞれ

実際にご相談をいただいた潰瘍性大腸炎の方のケースをご紹介します。

ケース1:職場復帰と休職を何度か繰り返していた20代の方

「症状が安定して職場に復帰したけれど、何度か悪化してしまい、その都度、お休みしなければならなくなった。薬を変えながら、安定しては復帰して、また悪化して休んで、を繰り返している。今回もまた戻っていいのか、もう転職するべきか…」

仕事をお休みをしている最中でのご相談でした。お話をお聞きしていくと「職場に迷惑をかけている」という負い目もあるけれど、それよりも自分の思い描いていたキャリアを築けないことへの悔しさが大きく横たわっていることがわかってきました。「本当だったらこんなこともあんなこともできたのに…」「まだ何もやり遂げていないのに…」「戻れたと思ったのにまた悪化してしまった。いっそ転職しようかと思うけれどキャリアダウンになってしまう…」と、叶えられなくなってしまったことへの無念さに覆われていました。

ケース2:転職を余儀なくされた30代の患者さん

「もともと潰瘍性大腸炎だったけれど、うまくコントロールして仕事も両立していた。そこに、新たにがんが見つかってしまった。職場からは『治療に専念してほしい。来週から来なくていい』と言われた。お払い箱にされた。悪魔の声に聞こえた…」

大変落ち込んだご様子でお話してくれました。企業側はもしかしたら、本当に心配して治療への専念を提案してくれたのかもしれませんが、ご本人がショックを受け悩んでいる、というのが事実です。「次の職場を探したいけれど、どうやったら就職できるんだろう…」「また辞めさせられたらどうしよう…」と、次への一歩を踏み出せない状況でした。

このおふたり、環境も状況も、症状ももちろん違います。どんな方であれ、すべての方が、ケースもシチュエーションも当然異なります。でも、治療と仕事の両立を目指す時、「自分らしい生き方・働き方を見つめていくことが大切な一歩になる」という点は、共通しています。

白黒はっきりさせず一旦先延ばしにすることだって前向きな選択肢

治療と仕事の両立を考えた時、多くの方がまず口にされるのは「今の仕事を続けるか、辞めるか」「職場の人たちに言うか、言わないか」。右か左かで、悩み込んでしまう方がとても多いです。

人は大きな帰路に立たされた時、白黒はっきりさせたくなるものです。でも、そこはグレーでもいいんですよ、とお伝えしています。「一旦、先延ばしにする」 「一旦、話しやすい上司にだけ軽く伝えてみる」というような、3つ目の答えがあってもいいのです。

在職中の方ならば、「辞める」というカードを持ちながら「一旦、自分のことを棚卸しする時間」にあてることだって前向きな選択です。すでに仕事を辞め、再就職や転職を考え立ち止まっている方ならば、なおさらまずは自分の「棚卸し」をしてみませんか?急いで転職先を探すよりも、きっと有意義な時間になります。

しゃべりながら「棚卸し」をすることで、自ずと未来が見えてくる

自分がこれまでやってきたこと、大事にしてきたことなどを振り返る「棚卸し」は、病気を抱えているいないに関わらず、多くの人が人生のどこかのタイミングでやることで、そのきっかけはさまざまです。

しかし、病気になると、突然考えざるを得ない状況になってしまうわけです。病気と仕事をうまく両立していたとしても、誰かの心無い一言や思いがけない出来事をきっかけに、考え始めてしまうことだってあります。

しかも「自分の体が信じられない」という不安と恐れの中で向き合わなければなりません。潰瘍性大腸炎は一生付き合っていく病気であるため、将来を考えること自体、つらい時もあるかもしれません。

これまで築いてきた積み木が崩れてしまったように感じられ、「あれもできない」「これも諦めるしかない」と、失ったことにフォーカスして落ち込んでしまうのも自然なことです。一人で考えていると、ぐるぐるとして出口が見えなくなってしまいます。

そんな時に、私たちに頼ってください。対話をしながら、崩れてしまったように感じた積み木の中から、ご自身が元々大事にしてきたこと、どうしても譲れないこと、これからも大切にしていきたいこと、そもそも生きる糧の中心に据えているもの、そして、治療と両立しながらできそうなことなどを、ひとつずつ一緒に拾い上げていきます。話しながら、自分で自分に貼ってしまっていたレッテルに気づくこともあります。絡まっている毛糸をほぐしながら、「ありたい姿」を見つめ、自分を再構築していくようなイメージです。

ありたい自分の姿が見えてくると、今の仕事を続けるか、別の場所を探すかも、自ずと答えが見えてきます。私たちはこうした対話の時間を通じて、治療と仕事の両立を根っこからサポートしていきます。ちなみに、先に紹介したケース1の方は、転職を選びました。でもそれはキャリアダウンではなく、自分らしく生きるための一歩である、という納得感のある晴れやかなものでした。

皆さんの、うまく言葉にならない漠然とした不安も、深みにはまり込んでしまった息詰まった思いも、ぜひ一度話してみてください。一緒に糸口を探します。

JCDA治療と仕事の両立支援事業「りぼら」

潰瘍性大腸炎に限らず、幅広い患者さんの就労移行期の心の準備をサポート。「30分無料相談」もこちらから。

https://www.j-cda.jp/ribora/for-patiant/

砂川 未夏 さん

キャリアコンサルタント(国家資格)、キャリア・コンサルティング技能士2級、特定非営利活動法人日本キャリア開発協会(JCDA)治療と仕事の両立支援推進プロジェクトリーダー。
20代、30代で2つのがんを経験し、2人の家族を看護した遺族でもある。がん治療の後、これからの働き方や生き方に数年悩み、その後、OLからキャリアカウンセラーへ転身。約15年にわたり学校や行政での就職支援、企業の人材定着のためのキャリア支援や研修に携わる。